第一章⑴四柱推命を思想で占っていいのか

【第一章】五行を疑え

【五常(五徳)とは】

皆さんは「五常(ごじょう)」をご存知でしょうか。
五常(五徳)は、人が常に守るべき5つの正しい道徳(仁・義・礼・智・信)を指す、儒教の中心的な思想です。

四柱推命などの東洋占術では、この思想を五行に配合して使うことがよくあります。
しかし本来は、孔子や孟子の教えをベースに発展した倫理観であり、人の運命を紐解(ひもと)くための道具ではありません。

  • 仁(じん):他者を思いやる、いつくしみの心。自他を区別せず、広く愛する最高峰の徳。
  • 義(ぎ):不正を恥じ、正義を貫(つらぬ)く心。自分の利益ではなく、人として「正しい道」を選ぶこと。
  • 礼(れい):社会の秩序(ちじょ)を守るためのルールや礼儀。他者を敬(うやま)い、譲(ゆず)り合う具体的な行動。
  • 智(ち):善悪や真偽を正しく見極める知恵。知識を詰め込むだけでなく、本質を見抜く判断力。
  • 信(しん):誠実であること、嘘(うそ)をつかないこと。他者との信頼関係の土台となる約束を守る心。

いま流通している対応では、この五つの徳目が五行と次のように結びつけられています。

① 木 = 仁

  • 木の性質:春に草木が上へと伸びていく、上方向への成長のエネルギー。
  • 結びつきの理由:草木がすくすくと育つ「生み出す力」が、「命を大切にする優しさ」へと翻訳された。

② 火 = 礼

  • 火の性質:夏に熱く燃え上がり、周囲へパッと広がる、外方向への発散のエネルギー。
  • 結びつきの理由:火は明るく周囲を照らして物事をはっきり見せるため、人間関係を「目に見える形」で明確にする秩序に対応した。

③ 土 = 信

  • 土の性質:季節の変わり目を支え、すべての生命を受け止める、中心の受容(じゅよう)のエネルギー。
  • 結びつきの理由:大地は動かず、いつもそこにあり、すべてを黙って支えるため、「揺るぎない信頼」に配置された。

④ 金 = 義

  • 金の性質:秋に果実を硬く実らせ、不要な枝葉を削り落とす、内方向への凝縮・剪定(せんてい)のエネルギー。
  • 結びつきの理由:金属の刃物が物事をスパッと切り分けるように、私欲を断ち切って「正しいことと悪いことを裁(さば)く決断力」に結びつけられた。

⑤ 水 = 智

  • 水の性質:冬に冷え込み、地中深くへと流れて潜む、下方向への貯蔵のエネルギー.
  • 結びつきの理由:水はどんな器にも形を変え、静かに深く蓄えるため、「深い知性」に当てはめられた。

東洋占術では、これを「エネルギーのベクトルと人間の精神活動をシンクロさせたマトリックス」のように説明することがあります。


【思想で占えるのか】

木が多い人は本当に「優しい」。
金が強い人は「正義感」が強い。

四柱推命や風水に触れると、こうした説明がよく出てきます。

木は伸びる働き。火は広がる働き。金は削り、区切る働き。水は蓄え、流れる働き。
ここまでは、自然のイメージとしてわかりやすい。

ところが一般の四柱推命には、そこに仁・義・礼・智・信という≪道徳≫がいきなり結びつきます。
なぜ木が「仁」になり優しくなり、金が「義」になり正義感になる。
この結びつきは、自然を観察していたら自動的に生まれたものではありません。

いま見ている五行には、自然の層の上に、後から「儒教の道徳」の層が重ねられている。そう考えた方が無難です。

ただ、この記事は、五行を否定するためのものではありません。
むしろ五行を深く使うために、長い時間をかけて上書きされてきた層を、一度ほどいてみる試みなのです。

そして、誰が上書きしたのか。
それはもちろん、儒家(じゅか)であり、儒教を利用して国を作ろうとした者たちです。


【まとめ・四柱推命の本質を見つめ直す】

四柱推命などの東洋占術で語られる「木=優しさ(仁)」「金=正義感(義)」といった解釈は、自然界を観察して生まれたものではありません。

それは後世の統治者や儒家たちが、社会の秩序を守るために「儒教の道徳」を五行の性質に重ね合わせたものです。

占いを単なる道徳論で終わらせないためには、この上書きされた歴史の層を一度ほどいてみることが重要です。

そこには、五常だけではなく、様々な上書きされた歴史があり、現在では当たり前とされている五行理論の根本を覆すような事実も見るかるかもしれません

本来の「純粋な宇宙来の自然エネルギーの働き」へと視点を戻すことこそが、四柱推命をより深く、本質的に使いこなすための第一歩となります。

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